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2025.1.23(木)更新
●13:40 横須賀・有料ホーム歌の会
●16:00 こいこい植木
ほーさん。

3ヶ月くらい前からかな、ご参加スタートは。
いつもしかめっ面で。
なんだか不安げで。
あった最初の日は、握手しようとして手を出しても、ものすごいスピードで手を引っ込めるし。

でも、毎回、強い眼差しで私のおしゃべりを聞いてくださいます。
耳もあんまりかな。
発語も難しいの?
私の認識もあるのかな、ないのかな。

3ヶ月やってもなんだかはっきりしないことが多いけど、でも、ここのところ歌の会の終わりには拍手してくれるし、ハイタッチしてくれるようになりました。


でも、まだまだ本心がつかめない。
でも、それをつかみにいこうとする必要はなくて、必要な時間とか距離がちゃんとあるし、それを決めるのは向こうなので、こちらからは基本的にアプローチしないのが、私の鉄則。

でもジャブは効かせるわけです。


歌の会の始まる前に、リビングに行って声かけをします。
テーブルに、ほーさんと何人か新人さんが座らせれています。

こんにちわー。
横浜の富永ですー。

少し慣れてきたのかもしれない、ほーさんにわざと最初に行くわけです。
最初に行く、というのは相手の心を強くノックしますからね。

するとほーさん、「おー」とか「あー」とか言って、手を差し出すではないですか。

おや今日はこれまでにないいいお天気。認知症状はお天気のようなもの。そして、人によって曇りや雨が多いもの。
その曇りや雨はその人の本当の姿ではありません。

おお、いいお天気。
本来のほーさんだな、これは。
少しずつ距離を詰めます。
他の新人さんにも声をかけます。こっちも大事ですしね。

「今日は1月23日ですよ。この日、何の日か知ってます?ほら、大事件が起きた日。今から100年以上前、逗子開成高校の12人の男の子が船に乗って江ノ島に向かった日が、今日なんですよ!カクカク、シカジカ……」

ひと通り話すとほーさん、
「はなしがうまい!」
とこうくるわけです。

この3ヶ月、ちゃんとした会話は一度もできていない方の口から、こういう「芯を食った」感想ワードが飛び出すと、私は即座に、脳内地図を書き直すわけです。

ほーさん。
しっかりしている。
って。

天気がいい日は今日だけかもしれません。
でも、曇り空の日だって、実は表面とか、表情とか、発語とか、いろんな反応はどんよりくもっていても、ちゃんと空の向こうに太陽が見え隠れしてるんです。

曇りの日だってちゃんと昼間は明るいでしょ。
ちゃんと陽の光は届いているんです。
僕らの言葉や態度もちゃんと相手に届いているし、太陽の姿が見えなくてもその明るさがある限り、雲の向こうの太陽に向かってこちらは話しかけなくてはなりません。


歌の会の間中、ちょっと晴れ過ぎていて、拍手したり、感想言ったり、とてもハイテンション、よく笑うし、よく話してくれました。

若い介護士さんも、
「あんなにほーさんが笑顔になったり話すのは滅多にないです」
と、本人もうれしそうに驚き顔で言ってくれる。


それを見せることができて、良かったなあって思うし、またどんな対話ができるのか、私自身楽しみなわけです。



3ヶ月かけてゆっくりと関係性を積み重ねたこと。
ゆっくりと待って、自然に、ほーさんの本来の姿が見れたこと。
引き出したその姿を介護士さんにも見てもらえたこと。

もちろん、施設での暮らしに馴染めたからその瞬間があるわけです。
毎日に安心できて、安定していて、軌道に乗って心から安心できるようになったことが大きい。
日々施設のスタッフのみなさんがそれを積み重ねたことがいちばん大きいと思います。
だからこそ、その瞬間に出会えるわけです。


ほーさんは普段はしかめっつらで、拒否もあって、発語も難しい方です。
でも、そんないい瞬間があれば、自然ともっといい関係性になっていくし、それは本人のいい毎日につながっていきます。



そんな大きな瞬間でしたし、大きな一日でした。

曇り空の向こうの太陽を見た。
そんないい一日でした。














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